別府市・津田憲吾さん

発達障がい児向け学習塾marble勤務/作業療法士

幼少期から障がいをもつ方々とのつながりを通じて

僕が作業療法士になろうと思ったのは、特別支援学校の教師をしていた父が「作業療法士っていう障がい者や高齢者の生活を豊かにする仕事があって、色んな自助具※1も作るんだよ」と教えてくれたことがきっかけでした。もともと、物づくりが好きだった自分の強みを活かせそうだなと思ったんです。

そんな父の影響もあって、僕が子どもの頃から障がいをもったお子さんのサマースクールやスポーツのボランティアを通じて、障がいをもつ方々と関わってきました。同年代のダウン症の男の子と取っ組み合いの喧嘩もしてましたし、僕にとって障がいをもつ方が社会の中に居ることは当たり前なことでした。

その時に出会った、子どもさんのお母さんたちがすごくエネルギッシュだったんですよ。僕は、気づかないうちにパワーをもらって、こういう元気がもらえる人たちの側にいたいなと思うようになりました。

けど、作業療法士を養成する大学に通っていた頃、先生から「人は、いつも元気でいなくてはいけないの?」「いつも元気でいなきゃいけない社会って苦しいよね」って言われたんです。ハっとしました。
たしかにそうだ。そんな社会は苦しいよなって思ったんですよね。
作業療法士になってすぐは、脳神経外科の急性期病院※2に就職し、主にリハビリテーション業務に携わっていました。

就職して社会に出て。今までは感じたことがない違和感を感じました。なんでこんなにも障がい者と健常者で分けられているんだろうって。人によって全然違うことが当たり前なのに。みんなを同じ型にはめたがることが、どこか苦しかったです。

そんなモヤモヤした感情を救ってくれたのが、障がい者スポーツを通した子どもたちとの再会でした。子どもたちに遊んでもらうのは、本当に楽しくて、ワクワクするような時間でした。でもその反面で、病院での自分の仕事に疑問は膨らむばかりで。
「障がい者スポーツはライフワーク。病院での仕事はライスワーク」と、無理やり自分自身を納得させていました。
そんな時、妻が妊娠したんですね。今、7歳になる息子です。

僕は、どんな父親でありたいんだろう? 息子にどんな背中を見せたいんだろう? 息子が成長した時、どんな社会であってほしいんだろう? 僕になにができるんだろうかという想いが、ふつふつと沸いてきました。妻のお腹の中で成長していく息子は、僕自身に考えるキッカケをくれたんです。

※1 自助具……身体の不自由な人が日常の生活動作をより便利に、より容易にできるように工夫された道具のこと。

※2 急性期病院……事故による怪我や病気を発症した直後、極度に重症だったり、命に関わる症状を伴う場合、その期間を脱する治療や検査を行うための病院のこと。

子どもたちとのかかわり

そんな時、お世話になっていた作業療法士の大先輩から「病院ではなく地域の中で、子どもたちと関わってみないか?」と、今の仕事に誘われて、二つ返事で転職を決めました。

転職した当初、今の学習塾は存在しなくて、同法人の放課後等デイサービスに勤務したんです。子どもたちの近くに行きたいと思って、医療の世界を出て福祉の世界に転職したんですが、福祉からもこぼれ落ちて行く子どもたちがいることを目の当たりにしました。「グレーゾーン」と言われる子どもたちです。医療でもない、教育でもない、福祉でもない、子どもたちの受け皿が必要だ。それはどんなカタチをしているんだろうと考えたときに、この「複合スペースmarble」という発達障害専門学習塾を思いつきました。

※放課後等デイサービス……障がいのある児童(小・中・高校生)が学校後や長期休暇中に通うことができる施設のこと。

最近、感じるのは学習と教育の違いです。

学習は、教科学習ですよね。でも僕はそれがしたくて学習塾をしているわけじゃないんです。勉強の仕方とか自分との付き合い方を、勉強という媒体を使って教えてあげたいんです。ここに通ってくるお子さんたちは、勉強が苦手で、学校が苦手になって、結果自分のことが嫌いになっちゃう。そういう悪いスパイラルを止めてあげたい。

その子の考え方の癖を見つけて、どう伝えたらその子がわかりやすいのかを考えるようにしています。そして、一人ひとりのうまくできるところを伸ばしていきたいです。

一人ひとりにあった勉強方法を見つけていくなかで、一番大切なのは「おもしろい」かどうか。

たとえば、絵が好きな子にコンパスの使い方を練習する時は、コンパスに色鉛筆を刺してお花畑を描いたり、アニメが好きな子には推しの声優さんのインタビュー記事をまとめてもらったりしています。

教える人たちがしかめっ面してたり、その子を型にはめたり、方法論に頼りだすと楽しくなくなってしまうんです。

一緒に新しい発見をしたり、本人に意見を聞きながら進めたり、いつのまにか一緒にやってる僕がワクワクしたり。そういった一人ひとりにあった勉強法を見つけてあげられるのが、僕の作業療法士という職業を通しての特性だと思っています。

今は、正直なにが仕事なのか分かりません……。
「今の夢は何ですか?」と聞かれても答えられないんです。生活を豊かにしたいというテーマはあるけど、夢じゃないんですよ。

その時々に困っている人たちを見るといろんな物がふつふつと沸いてきて、「僕に何かできないか?」という気持ちになるんです。僕は、自分の夢のために働くというより、目の前の誰かのため何かできることをという考え方のほうが強いみたいです。

息子への想い

かっこいいお父さんでありたいですね。
最近、オンライン授業を自宅でしてるんですけど、英語とか数学とかパソコンを通じて塾生と勉強してるんですよ。そんな僕を見 て息子は「パパは何やってる人かわかんない」って言います。はじめはちょっと寂しかったけど、最近はそれでもいいかなと思ってます。

「なにをしてるかわからないけど、楽しそうに仕事してる」
そんな風に思ってもらうことが、僕の一番の目標なのかもしれません。
でも、僕が死んだときに「おやじの背中はでかかったな」と息子に思わせたいですね。

大分んこと、知っちょん?
〜教えて! 大分の好きな◯◯〜

別府十文字原公園で見る朝日


小・中学生の僕は「いい子」ではありませんでした。
毎日に閉塞感を感じていた僕にとって、高崎山と別府湾が一望できるこの場所は、ほんの少し心を軽くしてくれる場所だったんだと思います。

▼別府市野田
別府十文字原公園

text & photo by Takamasa Anan