お店を構えるまでの道のり
生まれも育ちも別府。小さい頃から飲食店に興味があって、中学校を中退して近所のホテルで見習いとして働いちょったんよ。まあヤンチャしよったわ。それからずっと飲食の仕事しよんな。
結婚して子どもが生まれて、長男が小学生に上がって子育ても落ち着いた2016年9月に念願だった自分のお店をもつことができた。うちはAPU(立命館アジア太平洋大学)が近いけん、学生さんに腹いっぱい食べてほしいんよ。
そのために毎日働いているようなもん。毎日がほんと楽しいんよな。
APUの学生との縁
別府市には、APUがあるけん。世界中から学生が集まる大学やろ? 自分の夢を叶えるために、はるばる別府まで学びに来てる。
学生さんの中には、イスラム教を信仰する子もたくさんおって、彼らは宗教上の理由から食べられるものが限定されちょんのよな。特に「豚」に関する決まりは厳しくって、油が少しでも付いたらそのものを食べることはもちろん、触れることさえ許されないなんていう子もおるくらいやけんな。
彼らにとって、この異郷の地・日本で生活することは簡単なことではないと思うんよ。実際に、イスラム教を信仰する人が食べられる料理を提供している飲食店は、別府にほとんどないからね。
だから、イスラム教を信仰する学生でもおなかいっぱい、おいしいご飯が食べられるように「ハラール料理」を提供しよんのよ。
ハラールとは、アラビア語で「許される」という意味で、イスラム教徒はハラール料理と認定されている料理以外を食べることができないそうで。それやと困るやろ? だからハラール料理を研究したんや。油はハラール用のものを使う。そのときに使うお箸、お皿も変える。
そうやって考案したのがチキン南蛮。イスラム教徒の学生さんには人気ナンバー1のメニューだよ。ほかにも、鶏鍋や水炊き、地鶏BBQもハラール料理にした。それもこれも学生さんたちが協力してくれるおかげ。
最近では食のダイバーシティに取り組む「別府ハラール料理研究家」として取材してもらったこともあるんよ。
今後の挑戦
今つくりたいと思っているのは、別府に国際都市を築きあげること。アメリカのシリコンバレーやトヨタが開発を進めている「ウーヴンーシティ※」じゃないけど、別府に世界の人が集まるような都市を創りたいんよ。
自分が生まれ育った別府を盛り上げたいっていう気持ちとAPUの学生がもつ力をかけあわせたらできると思っちょんのよ。
※ウーヴンシティ……WovenCity。人々の暮らしを支える新技術やサービスを実験的に導入・検証する実証都市のこと。トヨタ自動車が開発を進めている。
だから、APUの学長で実業家である出口治明さんや長野恭紘・別府市長氏と直接交渉しよんのや。夢を実現するためにできることはなんでもする。挑戦をやめることはないと思っちょん。
でも、こんな大変な夢、俺だけじゃできっこないし、年齢から言っても難しいやろうな。だからこそ、これからの世代が必要で、今は次の世代の人のために活動しよんのよ。
APUの学生を別府で働く人たちや小・中・高校生につなげて、別府ならではの国際都市を創るため日々奮闘中っちとこかな。
大分んこと、知っちょん?
〜教えて! 大分の好きな◯◯〜
APUの校舎
コロナ前までは、週に何回かお弁当を作って、持って行きよったんや。
あの頃が懐かしいな。早く、あの活気あるAPUが戻ってきてほしいもんやな。
▼別府市十文字原
APU(立命館アジア太平洋大学)
text & photo by Kazuma Oshiro