豊後大野市・宇野功ニさん

作業療法士/「犬飼ふれあいセンター」代表

四面楚歌からのスタート

作業療法士として山梨県で8年間務めた時に地元の豊後大野市の犬飼町(いぬかいまち)に帰ることになりました。

実家は祖父の代から病院をやっていて創業82年になります。ちょうどその時期に公共施設「ふれあいセンター」の経営立て直しの声があがっており、その声を聞いた私の父が手を挙げて立て直しをすることを宣言したことが、私の犬飼町への帰省の大きなきっかけとなりました(簡単に言えば、担い手は私以外に考えていなかたのようです)。

そんなきっかけから、児童館と放課後児童クラブ、高齢者の方に向けた介護予防などをする「犬飼ふれあいセンター」をスタートしたんですが、最初はすごく大変でした。経営も施設運営もやったことがなかったですし、私自身何から手を付けたらいいのかという課題もありました。

そこでまず、保護者の方々の意見を訊いたのですが、中々応えてくださらない。当然なんですよね。私はこの地域で育ってはいても、それは子どもの時の話しで、大人になった私は地域の方々からしてみれば、新参者でしかなかったです。

まずは、子どもたちのために

そこで基本に戻り、子どもたちが来たいと思うような場所を模索しながらつくっていきました。

すると、子どもたちが来てくれるようになったんですよね。子どもたちが児童館のことを「楽しい」「おもしろい」「いろんなことをしてくれる」って言ってくれたんです。親御さんがお迎えに来ても「帰りたくない~」と言ったり、「今日は何時までいたい」と交渉したりすることで、親御さんがここは居やすいんだとわかってくれるようになってきたんです。

その結果は数字にも出るようになり、児童館や放課後児童クラブを使う人の数が、以前は月に400人程度だったのが、現在は1300人を超えるようになりました。こうしてだんだんと地元の方にも認知されるようになり、犬飼町との共同イベントをするようになりました。

たとえば、秋の交通安全として、子どもたちと夏休みにお守りを作って、自分たちの通学路を通っている車や商店街のお店の方々に配って、子どもたちと顔なじみになれるようにしていきました。ひと昔なら当たり前のようにできた「あいさつ」も、今の時代背景では“知らない人に声をかけてはいけない”という風潮があります。小さな町だからこそ、子どもと町の方々と顔なじみになってもらい、子どもたちが何か困ったときに助けてくれる顔なじみの大人を増やそうという発想に切り替えた企画になりました。

その結果として、地元の方々にもこの気持ちが伝わりはじめ、町の人から「お手伝いしてあげるよ」と言われるようになったんです。

「犬飼ふれあいセンター」の日常。宇野さんは子どもたちのそばにいる。

「この町に育ててもらった」と思えるような土壌をつくりたい

話しがすこし未来になりますが、これからやっていきたいのは、地域の子どもたちに私たちが高齢になった時のことをすこし意識してみてもらいたいんです。

そう思うのは、核家族化が進み高齢者の方と接する機会がないお子さんがだんだんと増えてきています。近い未来、接したことがない子どもが当たり前になることが心配になり、すこしでも接する機会を増やすために、企画したのが老人会とコラボした「キッズマネースクール」です。

子どもたちにお金の大切さを伝える目的もありましたが、町の老人会の方とふれあいの企画をつくりました。
それは、子どもたちが手作りのお店を出し、そこに老人会のみなさんに来てもらい買ってもらう。買い物をしてもらった子どもたちは老人会の方に「ありがとう」と伝える。日常のひとコマですが、あえてそれを意識することで、子どもたちと老人会の方と繋がりを持ち、その結果、月に1回老人会の方に子どもたちの下校時に見守りをしていただけるというカタチとなりました。

子どもたちは、この町で育ち、守られ、今度は自分たちが高齢者の方を見守っていく。そんな自然な流れをつくっていくためなら、私にできることは何でもやっていこうと思うんです。

過去の自分が教えてくれたこと

私個人の話になるのですけど、私自身、実は幼稚園も学校もあまり行きたくなくて、よく逃げ回っている子どもだったんです。

そんな経験があるので、不登校のお子さんの気持ちも何となくわかります。今、思うと当時の私は学校=知識を詰め込まれるところとなっていたんですね。
私はもっと色んな感性を信じて、その時間をいっぱい使いたかったのに! どうして休んで増やしたらだめなの?

もしも、そんなことを一緒に考えさせてくれる場所があったらきっと行っていると思います。あとは何か伝えたいけど、伝え方がわからなくて困っていたことを思い出します。

こんな子ども時代を過ごして大人になり就職したので、社会人として人と合わせるとか、自分の気持ちを切り替えるなどが苦手で苦労しました。でもこの経験が子どもたちの訴えを汲みとっていく時に生きてきますし、センターの存在を考える時の大切な思いになります。

一人ひとりの子どもの目と心に気持ちを向けたいと思うのは過去の自分が教えてくれた大切な気づきです。

学校との連携とこれから

地域で子どもを育てる中核の1つに「学校生活」という大切な時期があります。センターの中に子どもの発達に寄り添う作業療法士がいることがすこしずつ浸透し、最近相談を受けることも出てきました。

先日も“行儀がわるい”の一言で注意され学校へ行きしぶりをみせていたお子さんに対し、からだをサポートするダンボールクッションを提供したところ落ち着いて座って授業を受けられるようになってきました。

これはあくまでも1つの事例ですが、これからも学校を含めた地域の中の1つの施設として「犬飼ふれあいセンター」が子育てを幅広く担っていければと思っています。年齢を問わず出入り自由な地域によりそうセンターを目指し、地域の輪が広がっていくとうれしいなと思っています。

大分んこと、知っちょん?
〜教えて! 大分の好きな◯◯〜

カウベルモーターパーク


小さい時からスキーをしていて国体にも数回出場。小さい時からスピードが出るものが好きだったんです。

玖珠にある「カウベルモーターパーク」に気持ちをリフレッシュしたい時によく行っています。レーシングカートの体感速度は80㎞以上、スピードがでると走っていること以外考えられなくなるから、モヤモヤした気持ちにリセットができ気分スッキリになりますよ!

▼玖珠町戸畑
カウベルモーターパーク

text by Naoya Miura
photo by Kengo Tsuda